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===『西洋事情(初編)巻一』=== |
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○欧羅巴政学家の説に、<ruby><rb>凡</rb><rp>(</rp><rt>およ</rt><rp>)</rp></ruby>そ文明の政治と称するものには六ケ条の要訣ありと云えり。即ち左の如し。 |
○欧羅巴政学家の説に、<ruby><rb>凡</rb><rp>(</rp><rt>およ</rt><rp>)</rp></ruby>そ文明の政治と称するものには六ケ条の要訣ありと云えり。即ち左の如し。 |
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;第一条 自主任意:国法寛にして人を束縛せず、人々<ruby><rb>自</rb><rp>(</rp><rt>みず</rt><rp>)</rp></ruby>からその<ruby><rb>所好</rb><rp>(</rp><rt>このむところ</rt><rp>)</rp></ruby>を為し、士を好むものは士となり、農を好むものは農となり、士農工商の間に少しも区別を立てず、<ruby><rb>固</rb><rp>(</rp><rt>もと</rt><rp>)</rp></ruby>より門閥を論ずることなく、朝廷の位を<ruby><rb>以</rb><rp>(</rp><rt>もつ</rt><rp>)</rp></ruby>て人を軽蔑せず、上下貴賤各々その所を得て、<ruby><rb>毫</rb><rp>(</rp><rt>ごう</rt><rp>)</rp></ruby>も他人の自由を妨げずして、<ruby><rb>天稟</rb><rp>(</rp><rt>てんぴん</rt><rp>)</rp></ruby>の才力を伸べしむるを趣旨とす。<ruby><rb>但</rb><rp>(</rp><rt>ただ</rt><rp>)</rp></ruby>し貴賤の別は、公務に<ruby><rb>当</rb><rp>(</rp><rt>あたり</rt><rp>)</rp></ruby>て朝廷の位を尊ぶのみ。その他は四民の別なく、字を知り理を弁じ心を労するものを君子として<ruby><rb>之</rb><rp>(</rp><rt>これ</rt><rp>)</rp></ruby>を重んじ、文字を知らずして<ruby><rb>力役</rb><rp>(</rp><rt>りきえき</rt><rp>)</rp></ruby>するものを小人とするのみ。<span style="font-size: x-small;line-height: normal;">本文、自主任意、自由の字は、我儘放盪にて国法をも恐れずとの義に非らず。総てその国に居り人と交て気兼ね遠慮なく自力丈け存分のことをなすべしとの趣意なり。英語に之を「フリードム」又は「リベルチ」と云う。未だ的当の訳字あらず。</span> |
2009年9月14日 (月) 11:36時点における版
福沢諭吉 (福澤諭吉 1835-1901)
日本の教育者、思想家、慶應義塾大学創始者。
『西洋事情(初編)巻一』
○欧羅巴政学家の説に、
- 第一条 自主任意
- 国法寛にして人を束縛せず、人々
自 からその所好 を為し、士を好むものは士となり、農を好むものは農となり、士農工商の間に少しも区別を立てず、固 より門閥を論ずることなく、朝廷の位を以 て人を軽蔑せず、上下貴賤各々その所を得て、毫 も他人の自由を妨げずして、天稟 の才力を伸べしむるを趣旨とす。但 し貴賤の別は、公務に当 て朝廷の位を尊ぶのみ。その他は四民の別なく、字を知り理を弁じ心を労するものを君子として之 を重んじ、文字を知らずして力役 するものを小人とするのみ。本文、自主任意、自由の字は、我儘放盪にて国法をも恐れずとの義に非らず。総てその国に居り人と交て気兼ね遠慮なく自力丈け存分のことをなすべしとの趣意なり。英語に之を「フリードム」又は「リベルチ」と云う。未だ的当の訳字あらず。 - 第二条 信教
- 人々の
帰依 する宗旨を奉じて政府よりその妨 をなさゞるを云 う。古来宗旨の争論よりして人心を動揺し国を滅し人命を害するの例尠 からず。英国にてもハノオーフル家の世に至てより以来は、専ら「プロテスタント」の宗旨を奉じ、一時は国内に令を下して他宗を禁じたれども、阿爾蘭 人の如 きは古来天主教を信じて政府の命に服せず、由 て又法を改め、宗門は人々の意に任すべしと定めたり。然 れども政府は固 より「プロテスタント」を奉ぜしめんとする意なるが故に、或 は大にその寺院を建立し或は他宗の教師を擯斥 して「プロテスタント」の教師に大禄 を与うる等のことありて、動 もすれば人心に戻 り、又近来は一法を立て、国政に関る大臣は「プロテスタント」宗の人に非 ざれば才徳ある者と雖 も擢用 することなし。右等の故を以て、天主教に帰依する者は家を挙て他国へ移住すと云う。是 即 ち政府にて信教の趣意を失する一例なり。 - 第三条
- 技術文学を励まして新発明の
路 を開くこと。 - 第四条
- 学校を建て人才を教育すること。
- 第五条
保任安穏 - 政治一定して変革せず、号令必ず信にして
欺偽 なく、人々国法を頼み安 じて産業を営むを云う。譬 えば、或は国債を償わず、或は通用金の位を卑 くし、或は商人会社の法を破り、或は為替問屋の分散する等、皆その政治に保任の趣意を失うものなり。現今仏蘭西 帝所有の金を英国の為替問屋へ預けしと云うも、その制度の固くして頼むべき所あるの一証なり。 - 第六条
- 人民
飢寒 の患 なからしむること。即ち病院、貧院等を設て貧民を救うを云う。
『中津留別の書』
- 人の自由独立は大切なるものにて、この一義を誤るときは、徳も脩むべからず、智も開くべからず、家も
治 らず、国も立たず、天下の独立も望むべからず。一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。
『學問ノスヽメ』
- 天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ人ノ下ニ人ヲ造ラズト云ヘリ。サレバ天ヨリ人ヲ生ズルニハ、萬人ハ萬人皆同ジ位ニシテ、生レナガラ貴賤上下ノ差別ナク、萬物ノ靈タル身ト心トノ働キヲモッテ天地ノ間ニアルヨロズノ物ヲ資リ。モッテ衣食住ノ用ヲ達シ、自由自在、互イニ人ノ妨ゲヲナサズシテ各々安樂ニコノ世ヲ渡ラシメ給ウノ趣意ナリ。
但し、最も有名とされる下線部は、諭吉の言葉ではなく、アメリカ合衆国独立宣言の内の一節を引用したものである。
- 我日本国人も今より学問に志し、気力を
慥 にして、先 ず一身の独立を謀 り、随 て一国の富強を致すことあらば、何ぞ西洋人の力を恐るゝに足らん。道理あるものはこれに交 り、道理なきものはこれを打払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこの事なり。 - 天理人道に従て互の交を結び、理のためにはアフリカの黒奴にも恐入り、道のためには英吉利・亞米利加の軍艦をも恐れず、國の耻辱とありては日本國中の人民一人も殘らず命を棄てゝ國の威光を落さゞるこそ、一國の自由獨立と申すべきなり。
『福翁自傳』
- 私のために門閥制度は親の
敵 で御座る。 - 所で
顧 みて世の中を見れば堪 え難 いことも多いようだが、一国全体の大勢は改進々歩の一方で、次第々々に上進して、数年の後その形に顕 われたるは、日清戦争など官民一致の勝利、愉快とも難有 いとも云 いようがない。命あればこそコンな事を見聞するのだ、前 に死んだ同志の朋友が不幸だ、アヽ見せて遣 りたいと、毎度私は泣きました。実を申せば日清戦争何でもない。唯 是 れ日本の外交の序開 きでこそあれ、ソレほど喜ぶ訳 けもないが、その時の情に迫 まれば夢中にならずには居られない。
『福澤全集緒言』
唯 早分りに分り易 き文章を利用して通俗一般に広く文明の新思想を得せしめんとの趣意 にして、乃 ちこの趣意 に基 き出版したるは『西洋旅案内』、『窮理図解』等の書にして、当時余は人に語りて云 く、是等 の書は教育なき百姓町人輩に分 るのみならず、山出 の下女 をして障子越 に聞かしむるもその何の書たるを知る位にあらざれば余が本意に非 ずとて、文を草して漢学者などの校正を求めざるは勿論 、殊更 らに文字に乏しき家の婦人子供等へ命じて必ず一度は草稿を読ませ、その分らぬと訴る処 に必ず漢語の六 かしきものあるを発見して之 を改めたること多し。- 余が印章に三十一谷人の五字を
刻 したるものあり。是 れは谷 にも山 にも地名などに縁あるに非 ず、三十一を一字にすれば世の字にして、谷人 の人を扁にして左右に並ぶれば俗の字と為 るが故に、即 ち世俗の意を寓したるものにして、前年、龍洲 先生の文談を聞きし後に特に彫刻せしめたる戯作 思付 きの印 なり。