凡河内躬恒
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おおしこうちのみつね。平安時代初期の歌人、三十六歌仙の一。『古今和歌集』の選者。
引用
[編集]『古今和歌集』
[編集]- 月夜にはそれとも見えず梅の花香をたづねてぞしるべかりける
- 春の夜の闇はあやなし梅の花色こそみえね香やはかくるる
- わが宿の花見がてらに来る人はちりなむのちぞ恋しかるべき
- 雪とのみふるだにあるを桜花いかにちれとか風のふくらむ
- 花みれば心さへにぞうつりける色にはいでじ人もこそしれ
- しるしなき音をもなくかな鶯の今年のみちる花ならなくに
- けふのみと春をおもはぬ時だにも立つことやすき花のかげかは
- ほととぎす我とはなしに卯の花のうき世の中になきわたるらむ
- 夏と秋と行きかふ空のかよひ路はかたへすずしき風や吹くらむ
- 詞書「みな月のつごもりの日よめる」
- 『古今和歌集』夏部の巻末歌。
- 詞書「みな月のつごもりの日よめる」
- うきことを思ひつらねて雁がねのなきこそわたれ秋の夜な夜な
- 秋萩のふるえにさける花みれば本の心はわすれざりけり
- 詞書「昔あひしりて侍りける人の、秋の野にあひて、ものがたりしけるついでによめる」
- 住の江の松を秋風ふくからに声うちそふる沖つ白波
- 『古今和歌集』では作者とは明示されない。『躬恒集』『拾遺和歌集』では躬恒の作とする。
- 初雁のはつかに声をききしよりなかぞらにのみ物を思ふかな
- ひとりして物をおもへば秋の夜の稲葉のそよといふ人のなき
- わが恋はゆくへもしらずはてもなし逢ふを限りとおもふばかりぞ
- ながしとも思ひぞはてぬ昔より逢ふ人からの秋の夜なれば
- わがごとく我を思はむ人もがなさてもや憂きと世をこころみむ
- 神な月しぐれにぬるるもみぢ葉はただわび人のたもとなりけり
- 詞書「母がおもひにてよめる」。喪の歌。
- 今更になにおひいづらむ竹の子のうきふししげき世とはしらずや
- 詞書「物思ひける時、いときなき子を見てよめる」
その他
[編集]- 山たかみ雲居にみゆる桜花こころのゆきてをらぬ日ぞなき
- 『躬恒集』。『拾遺和歌集』では素性法師の作とするが、藤原公任、藤原定家ほか多くは躬恒のものとし、躬恒の作であることが確実視される。