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木下謙次郎

出典: フリー引用句集『ウィキクォート(Wikiquote)』

木下謙次郎(きのした けんじろう 1869年 - 1947年)は日本の政治家・美食家。

『美味求真』 (1925年)

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  • 此の世ありて以来、人は求めて止まざるものあるや久し。而して其の真を求むる心は智識となり、善を求むる心は信仰となり、美を求むる心は芸術となる。其の美若し言語文字となりて現はるれば文学となり、色彩、線、点となりて現はるれば絵画彫刻建築となり、音律となりて現はるれば音楽となり、四肢身体の動作となりて現はるれば舞踊となる。而して美を求むる対象が異性に在れば之を恋愛と云ひ、美を求むる心食味に在る時、之を至味と云ふ。
  • 洋食に慣れたるものは蛆(うじ)の湧きたるチーズにも其の本味を知り、日本食に慣れたるものはウルカの塩辛(しほから)にも其の美を見出すべし。至味はすべてのものにものに存す。而して其の深浅の別ある、猶シエークスピーアの文を読むに似たり。其の人頭脳深邃(づなうしんすゐ)なるに従つて妙味愈々深きが如く、味覚深きに従つて至味愈々深く之に報ひ、浅きに従つて浅く之に応ず。
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