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森鷗外

出典: フリー引用句集『ウィキクォート(Wikiquote)』
森鷗外

森鷗外 (1862年 - 1922年)

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もり おうがい。日本の小説家、翻訳家、軍医。 本名森林太郎(もり りんたろう)。

  • 何等の光彩ぞ、我目を射むとするは。何等の色澤ぞ、我心を迷はさむとするは。菩提樹下と譯するときは、幽靜なる境なるぺく思はるれど、この大道髪の如きウンテル、デン、リンデンに来て兩邊なる石だゝみの人道を行く隊々の士女を見よ。胸張り肩聳えたる士官の、まだ維廉一世の街に臨める窗に倚り玉ふ頃なりげれば、様々の色に飾り成したる禮装をなしたる、妍き少女の巴里まねびの粧したる、彼も此も目を鷲かさぬはなきに、車道の土瀝靑の上を音もせで走るいろいろの馬車、雲に聳ゆる樓閣の少しとぎれたる處には、晴れたる空に夕立の音を間かせて漲り落つる噴井の水、遠く望めばブランデンブルク門を隔てゝ綠樹枝をさし交はしたる中より、半天に浮び出てたる凱旋塔の神女の像、この許多の景物目睫の間に聚まりたれば、始めてこゝに來しものゝ應接に遑なきも宜なり。
    『舞姫』
  • 人のを借りて我が光を増さんと欲する勿れ
    『知慧袋』
  • 余ハ少年ノ時ヨリ死ニ至ルマデ一切秘密ク交際シタルハ賀古鶴居ナリコヽニニ臥シテ賀古君ノ一筆ヲ煩ハス死ハ一切ヲ打チ切ル重大事件ナリ奈何ナル官憲威力ト雖此ニ反抗スル事ヲ得スト信ス余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス 宮内省陸軍皆縁故アレドモ生死別ルヽ瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辞ス 森林太郎トシテ死セントス 墓ハ森林太郎墓ノ外一字モホル可ラス書ハ中村不折ニ依託シ宮内省陸軍ノ榮典ハ絶対ニ取リヤメヲ請フ手続ハソレゾレアルベシコレ唯一ノ友人ニ云ヒ残スモノニシテ何人ノ容喙ヲモ許サス
    『遺言』より。鷗外が口述し、同郷の友人、賀古鶴所が筆写した。