島崎藤村
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自然主義文学の先陣を切った日本の詩人、小説家。
- 生命は力なり、力は聲なり、聲は言葉なり、新しき言葉はすなはち新しき生涯なり。
- 『藤村詩集』より
- 木曽路はすべて山の中である。 -- 『夜明け前』
- まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじまりなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情けに酌みしかな
林檎畠の樹の下に
おのづからなる細道は
誰がふみそめしかたみぞと
問ひたまふこそひしけれ- 『若葉集』
- 名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の實一つ
故郷の岸を離れて
汝はそも波に幾月
もとの樹は生ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる
われもまた渚を枕
孤身の浮寢の旅ぞ
實をとりて胸にあつれば
新なり流離の憂
海の日の沈むを見れば
激り落つ異郷の涙
思ひやる八重の汐々
いづれの日にか國へ歸らむ -- 「椰子の實」- 『藤村詩抄』