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*むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に[[別れ]]ぬるかな |
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*[[春日野]]の若菜つみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ |
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*人はいさ心もしらずふるさとは[[花]]ぞむかしの香ににほひける |
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**詞書「初瀬にまうづるごとに、やどりける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家のあるじ、かくさだかになんやどりはあると、いひいだして侍りければ、そこに立てりける梅の花を折りてよめる」。 |
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**小倉百人一首に採られる。 |
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*[[三輪山|三わ山]]をしかもかくすか春[[霞]]人にしられぬ花やさくらむ |
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*[[桜|さくら花]]ちりぬる風のなごりには水なきそらに浪ぞたちける |
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*[[夏]]の夜のふすかとすれば[[時鳥|ほととぎす]]なくひとこゑにあくるしののめ |
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*河風のすずしくもあるかうちよする浪とともにや[[秋]]は立つらむ |
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*秋風のふきにし日よりおとは山峰のこずゑも色づきにけり |
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*しらつゆも時雨もいたくもる山はしたばのこらず色づきにけり |
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**もる山は近江国守山と「漏る」を懸けたもの。 |
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*見る人もなくてちりぬるおく山の[[紅葉]]は[[夜|よる]]のにしきなりけり |
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*年ごとにもみぢばながす龍田河みなとや秋のとまりなるらむ |
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*[[雪]]ふれば[[冬]]ごもりせる草も木も春にしられぬ花ぞさきける |
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*春くればやどにまづさく梅の花きみがちとせのかざしとぞみる |
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**詞書「もとやすのみこの七十の賀のうしろの屏風によみてかきける」。本康親王は仁明天皇の皇子。 |
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*しらくものやへにかさなる遠にてもおもはむ人に心へだつな |
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**詞書「みちのくにへまかりける人によみてつかはしける」。 |
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*[[別離|わかれ]]てふ事はいろにもあらなくに心にしみてわびしかるらむ |
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*むすぶてのしづくににごる山の井のあかでも人にわかれぬるかな |
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**第四句「あか」は「飽か」と「閼伽」(仏への供え物、とくに水)を懸ける。 |
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**本歌は[[藤原俊成]]『古来風躰抄』。に「歌の本體はたゞ此の歌なるべし」と評される。 |
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*吉野河いは浪みたかく行く水のはやくぞ人を[[恋|思ひ]]そめてし |
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*世の中はかくこそありけれ吹く風のめに見ぬ人もこひしかりけり |
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*いにしへに猶立ちかへる心かなこひしきことに物忘れせで |
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*あすしらぬわが身とおもへどくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ |
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**詞書「[[紀友則]]が[[死|身まかり]]にける時よめる」。 |
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*君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見え渡るかな |
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**詞書「[[源融|河原の左のおほいまうちぎみ]]の身まかりてのち、かの家にまかりてありけるに、塩釜といふ所のさまをつくれりけるをみてよめる」。 |
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====『後撰和歌集』==== |
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*宮こにて山のはに見し月なれど海よりいでて海にこそいれ |
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*てる月のながるる見ればあまのがはいづるみなとは海にぞありける |
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**二首ともに『土佐物語』にも見える。 |
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====『拾遺和歌集』==== |
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*[[逢坂の関|あふさかの関]]の清水に影見えて今やひくらむ望月の[[馬|こま]] |
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*思ひかねいもがりゆけば[[冬]]の夜の河風さむみ[[千鳥|ちどり]]なくなり |
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*おほかたのわが身ひとつのうきからになべての世をも恨みつるかな |
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===[[w:土佐日記|土佐日記]]=== |
===[[w:土佐日記|土佐日記]]=== |
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*[[男]]もす |
*[[男|をとこ]]もすといふ日記といふ物を[[女|ゝむな]]もして心みむとてするなり |
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**表記は定家本「土左日記」による。 |
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*おもひ出でぬことなく、おもひ恋しきがうちに、この家にて生まれしをんな子の、もろともにかへらねば、いかがは悲しき。舟人も、みな子たかりてののしる。かかるうちに、なほ悲しきにたへずして、ひそかに心知れる人といへりける歌 |
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::むまれしもかへらぬものをわが宿に小松のあるをみるがかなしさ |
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:とぞいへる。なほ飽かずやあらむ、またかくなむ |
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::みし人の松のちとせにみましかばとほくかなしき別れせましや |
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:*帰京して、任地でなくなった女子を悼む歌。 |
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2005年7月12日 (火) 07:47時点における版
紀貫之 (872年頃-945年頃)
きのつらゆき。平安時代初期の日本の歌人。『古今和歌集』の撰者の一人で仮名序作者。紀友則は従兄。
『古今和歌集』
仮名序
- やまとうたは ひとのこころをたねとして よろづのことのはとぞ なれりける
- 世の中にある 人ことわざ しげきものなれば 心におもふことを 見るものきくものに つけていひいだせるなり
- このうた あめつちのひらけけはじまりけるときより いできにけり しかあれども 世につたはることは ひさかたのあめにしては したてるひめにはじまり あらかねのつちにては すさのをのみことよりぞおこりける ちはやぶる神世には うたのもじもさだまらず すなほにして 事の心わきがたかりけらし ひとの世となりて すさのをのみことよりぞおこりける
- ちはやぶる神世には、うたのもじもさだまらず、すなほにして、事の心わきがたかりけらし
- ひとの世となりて、すさのをのみことよりぞ、みそもじあまりひともじはよみける
- かくてぞ 花をめで とりをうらやみ かすみをあはれび つゆをかなしぶ心 ことばおほく さまざまになりにける。とほき所も いでたつあしもとよりはじまりて 年月をわたり たかき山も ふもとのちりひぢよりなりて あまぐもたなびくまでおひのぼれるごとくに このうたも かくのごとくなるべし
- なにはづのうたは みかどのおほむはじめなり
- 「なにはづのうた」は「なにはづにさくやこの花ふゆごもりいまははるべとさくやこのはな」。仁徳天皇に帰せられる。
- あさか山のことばは うぬめのたはぶれよりよみて このふたうたはうたのちははのやうにてぞ 手ならふ人の はじめにもしける
- いにしへより かくつたはるうちにも ならの御時よりぞ ひろまりにける
- 「ならの御時」は平城天皇。
- かのおほむ世や うたの心をしろしめしたりけむ
- かのおほむ時に おほきみつのくらゐかきのもとの人まろなむ うたのひじりなりける。
- 人まろはあかひとがかみにたたむことかたく あか人は人まろがしもにたたむことかたくなむありける
- たとひ時うつり ことさり たのしび かなしびゆきかふとも このうたのもじあるをや
和歌
- むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな
- 春日野の若菜つみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ
- 人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける
- 詞書「初瀬にまうづるごとに、やどりける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家のあるじ、かくさだかになんやどりはあると、いひいだして侍りければ、そこに立てりける梅の花を折りてよめる」。
- 小倉百人一首に採られる。
- さくら花ちりぬる風のなごりには水なきそらに浪ぞたちける
- 河風のすずしくもあるかうちよする浪とともにや秋は立つらむ
- 秋風のふきにし日よりおとは山峰のこずゑも色づきにけり
- しらつゆも時雨もいたくもる山はしたばのこらず色づきにけり
- もる山は近江国守山と「漏る」を懸けたもの。
- 年ごとにもみぢばながす龍田河みなとや秋のとまりなるらむ
- 春くればやどにまづさく梅の花きみがちとせのかざしとぞみる
- 詞書「もとやすのみこの七十の賀のうしろの屏風によみてかきける」。本康親王は仁明天皇の皇子。
- しらくものやへにかさなる遠にてもおもはむ人に心へだつな
- 詞書「みちのくにへまかりける人によみてつかはしける」。
- わかれてふ事はいろにもあらなくに心にしみてわびしかるらむ
- むすぶてのしづくににごる山の井のあかでも人にわかれぬるかな
- 第四句「あか」は「飽か」と「閼伽」(仏への供え物、とくに水)を懸ける。
- 本歌は藤原俊成『古来風躰抄』。に「歌の本體はたゞ此の歌なるべし」と評される。
- 吉野河いは浪みたかく行く水のはやくぞ人を思ひそめてし
- 世の中はかくこそありけれ吹く風のめに見ぬ人もこひしかりけり
- いにしへに猶立ちかへる心かなこひしきことに物忘れせで
- 君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見え渡るかな
- 詞書「河原の左のおほいまうちぎみの身まかりてのち、かの家にまかりてありけるに、塩釜といふ所のさまをつくれりけるをみてよめる」。
『後撰和歌集』
- 宮こにて山のはに見し月なれど海よりいでて海にこそいれ
- てる月のながるる見ればあまのがはいづるみなとは海にぞありける
- 二首ともに『土佐物語』にも見える。
『拾遺和歌集』
- おほかたのわが身ひとつのうきからになべての世をも恨みつるかな
土佐日記
- おもひ出でぬことなく、おもひ恋しきがうちに、この家にて生まれしをんな子の、もろともにかへらねば、いかがは悲しき。舟人も、みな子たかりてののしる。かかるうちに、なほ悲しきにたへずして、ひそかに心知れる人といへりける歌
- むまれしもかへらぬものをわが宿に小松のあるをみるがかなしさ
- とぞいへる。なほ飽かずやあらむ、またかくなむ
- みし人の松のちとせにみましかばとほくかなしき別れせましや
- 帰京して、任地でなくなった女子を悼む歌。